2017/04/21

リバイバルという風潮

ある事情でオーディオ棚を動かす事になり
大量のCDとDVDを全部出さなければいけなくなった。
出し入れ時は手を止めないように、
出来るだけ目をそらして淡々と作業に打ち込んだ。
でもメデューサみたいに目が合うとそらすことが不可能なものがある。

Peter Gabrielの『Secret World Live』の事を考えると夜も眠れなくなって
ついに夜、魔がさしてトラックリストから好きな曲だけ見始めたら
琴線に触れる音の洪水に興奮して余計に寝れなくなった。

次の日家族の者にも半強制的に見せると
家族も「Peterの様子に迫力がありすぎて目がそらせない」
と、ぐったりした瞳を物憂げにまばたきしながらも
TVを止めることができない。

クライマックスに使われる『SO』からの『In your eyes』
いつ観ても素晴らしく心にフレーズの残響が残る。



ライブを見て思い出した。
彼に関するDVDは正規品では全部持っているのに
ライブ以外のCDを殆ど持っていない。

翌朝ラジオで『Sledgehammer』がかかる。
これはもう買いに行くしかない。
                                

翌日CDを購入しようと思って
ショッピングセンター内のCDショップをあたると
ピーター・ゲイブリエルのぴーの字もない。
餌を探す雀みたいに上下に動いている様子を
店員に不審がられる。
ショッピングセンター内では『Sledgehammer』が
私をあざ笑うかのように高らかにかかっている。


ぐったり疲れた体を引きずり、結局自宅でワンクリックで注文。
世の中のしくみが複雑すぎてついていけない。
 
これには滑稽な私事都合がある。
全部自分が悪いのだ。
実は『SO』は当時、発売と同時に購入したものだった。
バイトでためたお金で買う喜びを与えてくれたCDの一枚だった。
ところが私は彼のCDを売ってしまった。
大事にしていたものを安易に売った理由は
敢えてここでは書かない。

25年以上経ち、リマスター版も出ている中で
敢えて古いCDを購入した。
長い間個人が丁寧に保管していたものらしい。
中古のCDや映画パンフを購入するとき、
おおげさかもしれないが、
私は時折、前の持ち主から、
魂の一部を引き継ぐような気分になる。

ともあれ『SO』が長い月日を経て
この度我が家に帰還する。
これを私は
再会した恋人のように、
もう二度と抱きしめて離さないだろう。

Peter GabrielはStingと組んで
昨年ツアーを行っていた。
その動画を拝見すると
声が変わっていないのに驚く。
『SO』の頃に観て
激しい思慕を募らせたうるわしき姿
(この表現がもう80年代ジュネ世代)
ではないけれど
もしかしてこの人まだ青春を生きてる?
と思わせるような雰囲気が
(おじいのはずの)彼から醸し出されている。
Stingもひげを剃って若々しくなって
『Solsbury Hill』がとても声に合っていた。
                   

私はそれを観て割りと嬉しくなったけれど、
今の御時勢、高いコンサート代で
古いヒット曲を延々聴かすみたいなことを
やめろと思う人もいるみたいで、
賛成と反対がどうやら入り乱れている様子。

まあまあ、お子さんもまだ小さい事ですし、
頑張ってもう一旗あげたいところなんでしょうし
ここはひとつ、応援してあげては・・・
と思わず間に入ったら大変な目にあったりするかも。
(ガクブル)

それにアーティストの立場になって考えてみれば
自分の作品をもう年だしもうやめる、
と折角の名曲を封印するのは哀しすぎる事情だ。

私がPeter Gabrielをまた聴き始めた理由
それは彼が作る音に今でもときめくから。
そう、たとえおじいでも。
今でも彼の存在に心が有り得ない程高揚する。

『認めたくないものだな、自分自身の若さ故の過ちというものを』

そう、それでいいのです。

2015年に観たKing Crimsonのライブでは
私は何故か涙が制御不能だった。
何故、沈着冷静なバンドの完璧な演奏を観て
感情に走ったのか自分でも理解できない。

あれだけの演奏をした彼等にとって
『沈着冷静な』ことも『完璧』なことも
こつこつ積み重ねてきた結果だからなのか。

やっぱり今考えても理由が見つからない。

最後Robert Frippが会場を見渡して
ゆっくりお辞儀をした時、

わざと泣かせようとしているとしか思えなかった。

頼むから『日の名残り』のアンソニー・ホプキンス
みたいな姿で前に立たないでくれ。

周りはおかしく思うだろう。
プログレを聴いて泣いてる女なんて
危険極まりない存在だと思われないか。
辺りをそっと見渡せば周りの女性はそっと
涙を拭いていた。

ああ、やっぱり、あなたもそうなのね。
理由なんて見つからなくていいのよ。


『僕は16歳で
周りは当然現代のポップを聴いてて
まあ好きだと思う曲もありますが、
僕はちょっとおかしいのかもしれないけど
この曲に心から感動しました。
この時代の一曲の中に
与えてくれる感動の
深さ(depth)に心から惹かれます。』

これは『In your eyes』の
歌詞を載せた動画のコメント欄に
載っていたもの。
それに対し、お姉様が
『全然おかしくないわよ!
この頃の曲に深い感動があるのは
ただただ、アーティストが
純粋に想いをこめて
曲作りをしていたからなのよ』
と優しくコメントをあげていた。


今でもきっと、純粋なアーティストは
大勢いるに違いない。
アーティストの意向が純粋に
反映されたアルバムが
もっと出てくればいいのにと思う。

それでこそ、リバイバルという風潮が
新しい潮流になって人々の心に
染み渡るのではないかと思う。

そんな時代がやってきてほしい。

追記:King Crimson、もうこれで最後かもしれない
   と思っていたらもう一度来日されました・・・
   しかも中休憩入れて長時間に及ぶ演奏・・・
   フリップ先生はさらにまた生徒さんを集めて
   いらっしゃるそうで、本当にお元気そうで
   奥様とも仲が良くて、何よりです。
   












































































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